大判例

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仙台高等裁判所 昭和27年(ネ)184号 判決

被控訴人は控訴人に対し、金二十万円及びこれに対する昭和二十七年一月二十七日以降完済に至るまで年六分の割合による金員を支払うべし。

訴訟費用は、第一、二審とも被控訴人の負担とする。

二、事  実

控訴代理人は、主文と同趣旨の判決を求め、被控訴代理人は控訴棄却の判決を求めた。

当事者双方の事実上の主張は、控訴代理人において、

一、本件小切手は被控訴人瑞厳寺副司佐々木承周が被控訴人を代理して振出したものであり、その振出については、同人に代理権限があつたのである。

二、昭和二十七年一月二十六日支払人に対し本件小切手を呈示し、支払を求めたが支払を拒絶されたので、同日支払人をして本件小切手面に支払拒絶の旨の宣言を記載せしめた。

と述べ、被控訴代理人において、

一、佐々木承周が被控訴人瑞厳寺を代理して本件小切手を振出したことは不知、同人が本件小切手振出当時被控訴人瑞厳寺の副司の地位にあつたことは争わないが、同人に被控訴人瑞厳寺を代理して本件小切手を振出す権限のあつたことは否認する。

二、控訴人主張のとおり、本件小切手が、支払要求のため支払人に呈示されたこと、小切手面に支払人の支払拒絶の旨の宣言が記載されたことは争わない。

と述べたほかは、原判決の事実摘示と同一であるからここにこれを引用する。

<立証省略>

三、理  由

訴外佐々木承周が被控訴人の副司の地位にあつたことは当事者間に争がなく、株式会社七十七銀行の作成部分につき成立に争がなく、その余の部分につき原審証人佐々木承周の証言により成立を認め得る甲第一号証と同証人の証言によれば、訴外佐々木承周は、昭和二十七年一月二十五日被控訴人を代理して、金額を金二十万円、支払人を株式会社七十七銀行、振出地を仙台市とする持参人払式小切手一通を振出したこと(右甲第一号証の小切手には特に支払地の記載がなく、また支払人の名称にその所在地の附記もないからして、小切手法第二条第三項により振出地において支払わるべきものである)及び同訴外人は、当時被控訴人瑞厳寺の副司として金銭出納の責任者の地位にあり、被控訴人を代理して小切手を振出す権限のあつた事実が認められる。右認定に反する当審証人高橋大六郎、梅津松嶺の各証言部分は採用できないし、その他に右認定を左右するに足る証拠はない。尤も本件小切手(甲第一号証)には、佐々木承周が被控訴人のため右小切手を振出す旨の文言即ち代理資格を表示する文言が明記されておらず、元来小切手が流通証券である関係上、商法第五百四条の規定は小切手の振出行為には適用されないものと解すべきであるから、果して被控訴人に右小切手振出人としての責任があるかどうかについては一応疑義を挾む余地がないわけではない。しかし、右甲第一号証には振出人の表示として、

宮城県宮城郡松島町松島字町内九一

瑞厳寺

佐々木承周

と記載せられ佐々木承周の名下に「承周」と刻したものとみられる丸形印が押されている。いうまでもなく振出人の住所は、小切手に記載すべき要件ではないのであるから、右小切手の「佐々木承周」の肩に記した「瑞厳寺」の表示を目して、直ちに同人の住所を記載したものと即断することはできない。却つて、右のとおり、先ず「宮城県宮城郡松島町松島字町内九一」と、次に行を改め「瑞厳寺」と、更に行を改め「佐々木承周」と記された、その記載の態様、各文字の配列状態(特に「瑞厳寺」の三字がその前行の文字よりも幾分字形を大きく記されている点に留意)を見るときは、右の第一行は瑞厳寺の所在地を表示し、第二行は振出人が「瑞厳寺」であることを示し、第三行は同寺を代理して小切手を振出す者が佐々木承周であることを表明したものと認めるに難くない。即ち本件小切手は、小切手面の記載自体からして佐々木承周が被控訴人のためこれを代理して振出したものと認め得られなくはないのみならず、成立に争のない甲第二号証、当審証人小泉登起男の証言によると、佐々木承周は、「宮城県宮城郡松島町字町内九一瑞厳寺佐々木承周」として株式会社七十七銀行との間に当座預金契約を結んでいたもので従来同人が被控訴人を代理して小切手を振出すに際しては、振出人の表示として単に「瑞厳寺佐々木承周」と記し代理資格を表示する文言を記載しないのを例としたけれども、一般には、被控訴人振出の小切手として流通していた事実が認め得られる。以上の次第であるから、被控訴人は佐々木承周が被控訴人を代理して振出した本件小切手につき振出人としての責任を免れないものといわなければならない。

而して、控訴人が本件小切手の所持人として昭和二十七年一月二十六日支払要求のため支払人にこれを呈示したところ、支払を拒絶されたので、同日支払人をして本件小切手面に支払の日を表示して支払拒絶の宣言を記載させたことは当事者間に争がない。

そうすると、被控訴人は控訴人に対し本件小切手金二十万円及びこれに対する右呈示の日の翌日である昭和二十七年一月二十七日から完済まで、小切手法所定の年六分の割合による利息の支払義務があるから、被控訴人に対し、これが支払を求める本訴請求は正当であつて、これを棄却した原判決は取消を免れない。

よつて、民事訴訟法第三百八十六条、第九十六条、第八十九条に則り主文のとおり判決する。

(裁判官 谷本仙一郎 猪瀬一郎 石井義彦)

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